洋ラン学園(趣味でない洋ラン園芸)
21世紀の洋ランの始め方・花の楽しみ方・育て方・咲かせ方・花盛り・続け方
大学院旧版
(初期または改善前の方法)
旧版
洋ラン大学院
古株から芽の出やすい種類と出にくい種類
カトレヤの中には、殆ど開花した最も新しい株からしか新芽が出ない種類と、以前に開花した古い株からも新芽が出る種類とがあります。
後者は直ぐに群生株になって、新芽もほぼ同時に複数出ます。すると、ある新芽は咲かなくても前後に出たどれかが咲くことになって、花が咲きやすくなります。
反対に新芽が一つしか出ないタイプは、なにかの加減で具合が悪くなると、回復に手間取ることになります。その反面、多くの新芽にエネルギが分散して作落ちする、ということはありません。
洋ラン大学院
続け方
鹿沼土植え
市販の洋ランの殆どはバークかミズゴケ植えです。しかし、これらは有機質のため必ず1-2年で腐り始め、根もそれにつれて腐ります。従って植え替えをしないと枯れてしまいますが、植え替えは手間がかかり危険を伴います。また特にバークは普通の園芸店では手に入りにくいです。
そこで、洋ラン学園では、手に入りやすく定期植え替えの必要の少ない鹿沼土植えを多用しています。東洋蘭系のシンビジウムや和蘭のセッコクと近縁のデンドロビウムを中心として、鹿沼土植えでも大丈夫な種類は下記のように沢山あります。むしろ、「趣味でない園芸に向いている」のは「鹿沼土でも大丈夫な位根の丈夫な種類」だと言えるでしょう。
「根の弱い種類」と書いてある一群は鹿沼土植えではミズゴケほどではないですが過湿にならないよう注意が必要です。
鹿沼土植えが一般的に可能な種類とバーク植え推奨種類
洋ラン学園ではバンダ・ミニバンダ以外は全ての種類を主に鹿沼土で育てています。心配な種類は、植え方を根を片むき出しにする、雨ざらしにしない、寒い季節には過湿にしないように気をつける、ことで、実際には問題なく育てられるはずです。
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根の丈夫な種類
鹿沼土植え | 鹿沼土 | スリット鉢 |
1シンビジウム、2デンドロビウム・ノビル系、
12キンギアナム、12+大明石斛
6オンシ、8ジゴペタ、16マキシラリア、aミルトニア・スペクタビリス、15グラマト、
一セッコク、三春蘭、四エビネ、五報歳蘭・駿河蘭 |
根のやや弱い種類 | バーク | 透明ポリポット | 3カトレヤ、7エピデン、9セロジネ、11デンファレ、11フォーミ、14デンキラ |
高温の周年室内栽培 | ミズゴケ | ペットボトル | 4ミニコチョウラン、3ミニカトレア |
バンダ類 | ミズゴケ | バンダ・ロール | 10ミニバンダ、13バンダ、二風蘭、二+名護蘭 |
パフィオペディルムのバーク植え(左)と鹿沼土植え(右)の根の様子

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複茎種 | 作落ちしにくい | 新芽が親並みに育つ | 一年型 |
1シンビジウム、2デンドロビウム・ノビレ、3カトレヤ(一年型)
12キンギアナム、16マキシラリア
一石斛、三春蘭、四エビネ、五報歳蘭・駿河蘭 |
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| 作落ちしやすい | 新芽が小さくなる |
半年型
(水切れ) |
3カトレヤ(半年型)、6オンシジウム、6ミニオンシジウム
11デンファレ、
9セロジネ |
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| 休眠期が長い(バルブ腐れ) |
| 15デンドロキラム(若苗) |
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| 年数がかかる |
多年型
大型(休眠) | 5パフィオペディルム、11フォーミディブル、12大明石斛、14グラマトフィラム |
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| バルブが腐りやすい | 柔らかい? | 6オンシジウム、6+ミルトニア・スペクタビリス、8ジゴペタラム、 |
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| 意外に根腐れ・枯れ | (水切れ) | 7エピデンドラム |
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単茎種 | 作落ちしにくい |
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| 4ミニコチョウラン、10ミニバンダ、二風蘭 |
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| 作落ちしやすい | 葉の枚数が減る |
| 4コチョウラン(日焼け・低温炭疽病)、13バンダ(風通し悪・根腐れ) |
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クール・
オーキッドなど |
夏に冷房しないと
枯れることが多い |
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| オドントグロッサム・ミルトニア・リカステ・ソフロニティス・マスデバリア |
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間引き・剪定と高芽取りと取り木
「趣味の園芸」の方法では、「洋ランの続け方」として「新芽が鉢いっぱいに広がったら2-3年ごとに株分け」しか方法がありませんでした。しかし、最も丈夫なシンビジウムでさえ「株分けした年は咲かないという覚悟」が必要とされました。その上、新芽が植えに伸びていく傾向のある、オンシジウム、カトレヤ、マキシラリアなどには効果がありません。
洋ラン学園では、「高芽取り・ペットボトルミズゴケ植え」で「暴れるオンシジウムやミニカトレア」を育てています。
洋ランを育てていると、新芽がどんどん出て、中には大きくならないものがあり、それから出た芽はさらに小さく、結局作落ちしてしまうということが良くあります。野菜作りや園芸の世界では「間引き・剪定」は常識ですが、「洋ランの趣味の園芸」では「芽欠き」しかなくそのような発想は欠けています。
「芽欠きをしないためにできてしまった小さいバルブは間引き・剪定する」
のが良いのではないでしょうか。
株分け
「株分け」は、「咲かせ方」までは不要で、基本的には「開花株の維持」に必要な世話です。
株分けは新芽だけでなく親株まで弱らせるので、上に書いたような別の方法がとれるなら、しないで済ませたいです。
透明ポリポットの更新
透明軟質ポリポットは、中が見えるため根腐れの予防に役立ち、安価で便利です。
その難点は、直射日光に弱く縁から崩れてしまうことです。そのため使用をやめる人があるようです。
しかし、薄くて崩れることは、ゴミになりにくいという利点でもあります。
同じ大きさの新しいポットを重ねれば、新しいポットのようになります。値段が安いので気楽にできます。
鉢底の穴の位置を合わせ、横穴を同じ位置に開けるようにします。

左:上から崩れて土がこぼれる 新しいポット・深いので上を切り取る 重ねた処
懸崖作り(平鉢・雨ざらし)
セロジネは、鉢から外へはみ出した芽が咲くことが多く、展覧会やネットで、鉢の周りに垂下りながら咲いているのを良く見かけます。これは「
盆栽や菊の懸崖作り」と似ているのではないでしょうか。
ガーデニングの世界では日本のセンスが尊ばれるようになっていますが、洋ランの世界は鈍感です。
洋ランの大半は、元々自生地では樹木に着生し、「
懸崖状態」で咲いているので、懸崖作りは自然なのです。「支柱を立てて上向きに咲かせる」のはむしろ不自然なのです。
小さい鉢に植えて上向きに咲かせようとすると、
株分けなど面倒な作業をしなければなりません。また
水やりも欠かせません。
平鉢に植えて雨ざらしにしておけば何の世話も要りません。腐りやすいバークやミズゴケでなく「鹿沼土」に植えてしまえば
植替えの必要は殆どありません。
冬に咲くデンドロビウムやセロジネなら、寒さにも強いので、霜除けがしてあれば都会では
玄関を飾ることもできます。ミルトニアも屋外なら数ヵ月は咲いています。
洋ランの根は樹木に着生して、枝を這うか空中にむき出しです。
広鉢に浅植えすると
根は表面近くを横に伸び窒息せずに良く育ちます。根腐れの心配が減り雨ざらしにできるので水やりも不要になります。
浅広鉢植え懸崖作りは「危険で手間かかり花が咲かなくなる株分け」に代る「合理的でランが喜び安全で楽しく手間のかからない方法」です。
着生種は全て浅広鉢懸崖作りに向いています。
鉢から飛び出すセロジネ、シンビジウムの
下垂種、デンドロビウムの下垂種を始め、
横に広がる厄介者のオンシジウムやカトレヤも適しています。空中遊泳の芽を育てるには「
保湿」がポイントです。

左:ミルトニアの支柱立ての昨年の花、 右:鉢の外に広がった「
半懸崖」の今年の花
鉢の規格化
鉢の種類が少ないと、便利です。洋ラン学園では、殆どの苗を
透明軟質ポリポットだけに植えています。またそれより大場地になるシンビジウムやカトレヤの大株はプラスチックのスリット鉢だけです。
ポリポット園芸店では売っていないので、
通販で取り寄せる必要があります。とても安いですが、ちょくちょく買うのは面倒で、100個単位で売られている場合があります。大きさは6cmから1.5cm刻みで13.5cmまで有りますが、色々揃えるのも面倒です。一方小鉢は育てにくいです。
そこで洋ラン学園では9cm以上だけにしています。園芸店で売られている鉢植えは大部分が系7.5cm鉢です。従って、
径9cmだけで殆どの苗を育てることができます。
作落ちしにくい種類としやすい種類
開花株を入手してもう一度咲かせようと思うと、新芽が直ぐに大きく育って咲きやすい種類と、新芽が親並みに育ちにくく咲きにくい(作落ち)種類があります。
慣れないうちは作落ちしにくい種類を選ぶのが無難です。
ただし大株でなく若苗では、親の力が足りずに新芽が大きくなりにくいので、種類によらず咲きにくくなります。また作落ちや病気も大株より多い傾向があります。
カッコ内は作落ちを助長・誘発する問題です。紫色は、他に比べて(やや)育てにくいか咲きにくい種類です。
作落ちしにくい種類(赤)は、大株を育てると丈夫で良く育ち咲きやすいです。
最下段のクール・オーキッドなどは洋ラン学園では扱わないので、「趣味の園芸」を参照してください。
131103 分離発足